hatakeさん
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イチジクの栽培方法
イチジクは家庭で育てやすい果樹ですが、原産地がアラビア半島・地中海沿岸ですから、耐寒性にも弱く日本の気候では東北地方よりも南が適地です。品種によってはマイナス9℃まで耐えるイチジクがあります。
害虫カマキリムシの幼虫の被害も多く樹木が枯れてしまう時もあります。熟果は鳥被害も多く、また雨に弱いので腐り易く毎日収獲されるのがよいでしょう。
樹高は2m〜5mで、鉢植えは3月中旬で、露地植付け時期は12月から3月の冬場です。イチジクは植えてから2~3年で果実をつけます。
イチジクは育てやすいのですが、毎年多く収獲し、大きいものを求めるとなると剪定の問題ですが、この話は別のところでお話ししましょう。
まず、品種の話からしますと、大きく季節別収獲時期から分類すれば、三種類(夏果、秋果、夏秋兼用果)あります。日本の一般的なイチジク家庭栽培では秋果か、又は夏秋果です。日本の市場で多く見かける品種もこの秋果と夏秋果です。
また、植え方には三つの方法があり、鉢植え栽培と露地栽培と鉢を露地に植える栽培があります。更に、樹木をどのような形で育てるかについては、「仕立て」と言います。まさに着物の仕立て、洋服の仕立てのようなもので、それには二つの方法があります。
即ち、V(又はY)型仕立て(別名、「放射状仕立て」「扇形仕立て」ともいうが本文ではV型とします)と、T型仕立て(別名、「一文字仕立て」ともいうが本文ではT型とします)があります。
イチジクの育て方で重要なのは、「品種選び」と「肥料と散水」と「植え方と仕立て方」と「剪定(別のカテゴリで説明しますのでここでは省略します)」の4つがポイントです。
品種選定
品種は200以上あると言われていますが、季節別収獲時期では、夏果と秋果と夏秋兼用果の三品種になります。日本の家庭菜園及び市場では秋果品種か、夏秋果兼用品種が一般的です。
夏果種
夏果種は、前年枝(2年枝)の枝先についた幼果が冬に成長が停止し、春先から再び成長して6月下旬~7月中旬に収獲です。お薦め品種は、「ビオレー・ドーフィン」で果実は非常に大きく、味もよい。樹勢が強くなく、木の収まりもよい。大きくて甘く美味しいが、梅雨に腐ってしまうので、日本の一般家庭には向いていない。剪定もしにくく、鉢植えには向いていません。というのも、コンパクトに仕立てられないという問題があります。
秋果種
秋果種は、春から伸びる新枝(1年枝)に花芽をつけ成熟し、収獲時期は8月中旬~10月中旬で、枝の基部から上部へ次々に結実します。今年の新枝(1年枝)に果実をつけるので、2年枝は必ず切って剪定します。お薦め品種は、「蓬莱柿(ほうらいし)(早生日本種)白い」で耐寒性、樹勢ともに強く、収量も多い。味はドーフィンよりよいが、雨で裂果しやすい。熟期はドーフィンよりやや遅いが、9月に収穫でき、甘くて美味しい白いイチジクである。日本の昔からある在来種で寒さ・乾燥に強く育てやすい。但し、蓬莱柿が実をつけるのは3年目以降です。
夏秋果兼用果種
夏秋果兼用果種は、夏秋の二回収穫ができ、夏果は2年枝に、秋果は1年枝に結実します。日本ではもっとも多く栽培されていますので、特にお薦めです。特に、「ドーフィン」は最も栽培の多い品種です。味はもう一歩だが、秋果は甘い。大果で収量が多い。青果店に出ているほとんどがこの品種です。樹勢も強くなく、木の収まりもよい。
夏果、秋果、夏秋兼用果のお薦め品種は、
タキイ種苗のホームページ及びサカタ種苗の等、イチジク樹木を販売している種苗店やホームセンターを参考にされるのが良いでしょう。
タキイネット通販の【イチジク】紹介ページ。家庭菜園・ガーデニング向きの種・苗・球根・園芸用品・農業資材を販売する通販サイトです。家庭菜園アドバイス、用語解説、料理レシピなどのお役立ち情報も満載です。
肥料(元肥と追肥)と散水
鉢植えの肥料と散水
鉢の容積が限られていますが、元肥として堆肥(牛糞か、または、乾燥鶏糞)と有機質肥料の油糟を入れます。イチジクの適応土は弱アルカリ土〜中性土を好みますので、石灰又は苦土石灰を必ず与えないといけません。尚、毎年、石灰(苦土石灰)を必ず与えてください。
植木鉢(8号~12号)の鉢底に鉢底石(小石、砕石、玉砂利)を2cm程度敷いて、その後、後述の混合土を数CM入れた後に、その上から堆肥300〜500gと油糟30g〜50gの混合して入れます。もし次の材料があれば、赤玉土(小粒)4、腐葉土3,鹿沼土3、苦土石灰一握りとを混合し、或いは、もし赤玉土、鹿沼土が揃わない時は、山土(赤い土)7:腐葉土3と苦土石灰一握りの混合した土を堆肥の上に入れてください。
或いは、周りにある普通の土を使われても問題はありませんが、最低でも堆肥(油糟のみでも良い)と石灰(又は苦土石灰)は必ず入れてください。但し、田んぼのような粘土質の土は避けてください。
各ホームセンターでの堆肥価格は色々ですが、目安価格として、バーゲン時には15kg鶏糞100円(但し半乾燥品ですが)、40L牛糞300円程度で販売されています。油糟は多少割高ですが少量入りの袋詰めが売っています。また、上述の赤玉土、鹿沼土、腐葉土など個々の土を買わないで鉢植え用培養土とか、プランター用培養土で25L又は40Lで約1000円前後で販売されていますので、この培養土のみでもかまいませんが、堆肥と苦土石灰は必ず入れてください。イチジク栽培では、培養土に含む肥料分のみでは不足します。植木鉢8号〜12号ですと土の容量は、5.2L(8号)〜8.4L(10号)〜14L(12号)です。
更に、イチジクは根や茎を丈夫にするカリ成分(K)を多く吸収します。一方、実りをよくするリン成分(P)も重要ですから、欲を言えば、カリ成分とリン成分も同時に鉢植えする時には施肥として入れて欲しい材料です。そして定期的な追肥の時もぜひ使用された方がよいでしょう。ホームセンターには、リンとカリの両方含むリンカリなる肥料が販売されていますので便利かと思います。冬以外の3~10月の間は、2ヶ月に1回、リンカリ30gと油糟30gと化成肥料(NPKオール8成分)30〜50gを追肥をします。苦土石灰は毎年1〜2回与える事を忘れず。
鉢植えの場合は水やりが必要です。過湿に弱いですが、葉っぱが大きく水分が逃げやすいので、夏は乾きやすいです。土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをし、極端な乾燥に気をつけます。枝を伸ばしながら実を付けるので、体力が切れないよう肥料はしっかり与えます。土の乾き具合を見て1週間に1〜2回程度は水やりする。
露地植えの肥料と散水
露地植えでの施肥量は、窮屈な鉢植えと異なり広々と土地を使う事ができますので、具体的な分量をあげてみました。12月~翌年1月に有機肥料1㎡当たり2〜3kgと苦土石灰を1㎡当たり150g施す。6月上旬に化成肥料30〜50g、7月中旬にリン・カリ肥料を30g施用し、冬以外の3~10月の間は、2ヶ月に1回、リンカリ30gと油糟30gと堆肥200〜300gを追肥をします。苦土石灰は毎年1〜2回与える事を忘れず。尚、イチジクの果樹の根元は1本ですから1㎡当たりという表示は変だと思われると思いますが、小木の場合は1mの四方としての分量で施肥されればよいかと思いますが、徐々に成長していきますと、枝が広がります。その広がりが広ければその分、根の広がりも大きいと見てください。それで、そのイチジクの広がり全体のエリアをみて何平方mあるかを判断されて追肥量を決めてください。
水やりについては、露地植えでも8月、9月は特に乾燥するので、土の乾き具合を見て1週間に1回程度は水やりする。また、3月~6月も、年によって乾燥が激しい場合は水やりする。
イチジクの植え方と仕立て方
植え方
すでに前述の施肥の所でも一部説明していますが、ここであらためて説明しますと、植え方には三通りあります。鉢植え方式(プランターも可能)と露地植え方式と鉢を露地に植える方式があります。鉢を露地に植える場合、鉢本体の1/2〜1/3を地中に埋める方法です。鉢植えに向いている品種はビオレッタ、プレスコがありますが、一般的な人気のドーフィンでもかまいません。実際のところ、どのイチジク品種でも構わなくて、要するに剪定の仕方で大きく育てたり、盆栽のように小さく育てたりできます。
筆者は、鉢植えを採用しました。ベランダ空間が広ければよいのですが、空間が限られていましたので、レンタル畑に持ち込んで鉢自体を1/2〜1/3地中に埋める露地栽培を行いました。
レンタル畑なので返却する際には、樹木を伐採か、あるいは、畑から持ち出さなくてはならず、それ故に、鉢植えであれば、直接樹木を露地に植えるより掘り起こしやすいメリットがあります。筆者は、ミカンの樹木も同じように鉢植えで露地栽培を採用し、4年後にレンタル畑から撤去しました。今では鉢植えで盆栽のようにこじんまりと栽培しているものと別のレンタル畑に移動したものもあります。イチジクの場合、2〜3年後に収獲できますので、レンタル畑の場合、3〜4年間借りられる畑にしましょう。
鉢植えへの植え方
鉢10号の事例で説明しますと、10号(直径30cm高さ30cm)の丸鉢で材質はポリプロピレン(PP)が適当かと思います。土の量は8.4リッター入ります。
プランターも使用できますが、高さ30cmのものは奥行き30cm、幅も60cmとなり、土の量も多くなって持てなくなりますので、避けられた方がよいかと思います。丸鉢の底の中央に一個の穴しかないものよりも底の円周に多数のスリット穴がある鉢(スリット鉢)を購入してください。
理由は水捌け以外に、もし後述するような鉢の一部を露地栽培として地中に埋める場合には、このスリットから多くの根がでていきます。培養土や肥料の入れ方については上述をみてください。
次に、この丸鉢をどこに置くかで樹の剪定が変わり、またイチジクの収穫量もかわります。もしベランダのような場所であれば、ベランダの空間の大きさによりますが、小さく育てる場合にはV又Y字放射状型(V状仕立て )に枝を伸ばしますのでそのような剪定をします。もう少し余裕があればT型(T状仕立て)に枝を伸ばしますので、左右水平の長さを60〜70cmに留めるように剪定します。それでも左右横幅合計が150cmとなります。
筆者のお薦めは、畑に丸鉢を埋めるのがよいかと思います。露地植えの直接植えでも良いのですが、不要になった時に撤去する際、鉢の方が取り除き易いです。置き場所は日当たりが良い場所で風があまり当たらない場所がよいかと思いますが、風が良く当たる場合、支柱やロープで支えたりします。
鉢植えでベランダで育てる場合の水やりは、4~10月は1日1回ですが、夏には2回行います。冬は7~10日に1回行う必要があります。また、植替えは、植え付け2年後の2~3月に古い根を切って新しい培養土を用いて行います。鉢増しする場合は、古い根を切り10号鉢(直径30cm)〜12号鉢に上げることです。
露地植え式の植え方
買ったイチジク苗木を植える手順として、最初に、穴の幅40cmx深さ30cmの穴(丸穴でも四角穴でもよい)を掘ります。この穴には前述の堆肥と苦土石灰、その他のリンカリなどを穴に入れて埋め戻し、再び直径15〜20cm穴(購入した苗木の根の大きさより少し大きめ)を掘って、水をたっぷり灌水して、そこへ購入したイチジクの苗(ここでは背丈30〜50cm程度の樹木)を植えて土を被せます。
露地植えは空間が広くとれますのでイチジクをT型やY型に育てる事が可能ですが、ここでは見栄えの良いT型仕立てで育てる方法をとるとして、植えた位置から左右に1.5〜2mの空間を確保するのが良いでしょう。この露地植え式では、根が深く、広く張りすぎて、撤去する際にはかなり一苦労する事になりますから、特にレンタル畑では、直接苗木を植えるのをお薦めしません。
勿論自宅に庭であれば直接植えられても問題は無いでしょう。露地栽培は、鉢栽培よりも自由度がありますので、その分、イチジクも大きく育ち、収穫量も増えるでしょう。
筆者は鉢植えで露地栽培の両刀使いで秋果で栽培をしてみました。即ち、丸鉢10号を使用し、鉢自体を地中に1/3埋めた方法で栽培しました。
空間の制約と個数確保の為にT型で育てました。即ち、まず垂直に枝1本を30cmあげて、そこから新しく伸びた枝の2本だけ残し、それを紐などで引っ張って水平に成長させます。そして水平枝2本それぞれ1〜1.5m伸ばしてから先端をカットします。そして、水平2本から新たな新芽(15〜20cm間隔)がでますので、それを垂直に伸ばします。その時の新芽5個を残し、その新芽が垂直枝となります。それで5本の垂直枝ができ、その結果、二つに別れた水平枝には、各5本づつの垂直枝が成長したことになります。
故に、水平枝2本X垂直枝5本=10本の垂直枝ができます。その枝の節に1個のイチジクが着果し、1枝あたり、空に向かって果実が15個〜20個(高さ2〜3m)できます。故に10X15=150個のイチジクができました。これら枝はそれぞれ支柱とロープ(紐)の組合せをして、自重と強風時に倒れないように補強します。
T型栽培を行えば、剪定も1つ覚えるだけで済みます。筆者はこの方法で、結果的には100個以上のイチジクを秋に収獲をしていますので、この方法をビギナーにお勧めします。
イチジクの仕立て方
①V状仕立て(V型・Y型)
昔から街角で良く見られる樹形でV型又はY型の放射状に拡がる形です。剪定は毎年冬に行います。
②T状仕立て(T型)
主枝を2本、左右にT型に開張させる方法です。主枝から上部に出る新枝が等間隔(2〜3筋毎)になるように間引いて垂直に仕立てます。
まとめ
筆者推薦の方法は、
①品種は秋果か、又は、夏秋果のドーフィンがお薦めです。剪定は必ず必要ですが、秋果の剪定は簡単です。夏秋果の剪定はやや複雑ですが、夏収獲をあきらめるならば、剪定は秋果と同じで簡単です。
②鉢植えで露地栽培が良い。理由は、施肥(元肥・追肥)のやり方に自由度がある。
③T状型仕立てが、たくさん収獲できます。