hatakeさん
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豆科のエンドウと言えば、実エンドウ、スナップエンドウ、サヤエンドウの御三家があります。エンドウは食用部分で名前が変わります。中の実のみを食べるのが実エンドウ(別名グリーンピース)、サヤと中の実を一緒に食べるのがスナップエンドウで、若いサヤを食べるのがキヌサヤ(別名サヤエンドウ)です。その他に新芽を摘んで食べる豆苗(とうみょう)もあります。
いずれも栽培方法はど同じですが、それぞれ適した品種がありますので育てたいものを選んで栽培をします。スナップエンドウ、サヤエンドウは 実エンドウに比べて栽培期間が短く初心者向きと言えます。
1.エンドウのルーツ
古代オリエント(現在の中東地域で、古代エジブト、古代メソポタミア、古代ペルシアなどが含まれる)地域で栽培された豆(エンドウと同じ豆科のソラマメ、レンズマメ、ヒヨコマメも含まれる)で、メソポタミアが主な原産と考えられています。
当初は麦類の間の雑草として生えていた実を食用にしたり、土の肥沃化に効果がある事を発見し麦類と混ぜ植え栽培するようになり、次第に栽培植物として品種改良が進んだと考えられています。麦作農耕とともにヨーロッパに広まり、中国に伝わったのは5世紀、日本へは9〜10世紀には伝わり、日本へは明治に入ってから本格的に栽培されるようになりました。
実エンドウ(グリーンピース)の国内生産県ベスト3(H28年度)は和歌山県、鹿児島県、北海道です。グリーンピース の全国出荷量(H28年度)は約4300トンです。
スナップエンドウの国内生産県ベスト3(H24年度)は、鹿児島県、熊本県、愛知県です。全国出荷量(H24年度)約5700トンです。
またサヤエンドウ(キヌサヤ)は全国出荷量(H28年度は)約11300トンです。現在の乾燥豆の大半は輸入品で、カナダ、イギリス、中国などから輸入されています。
2.エンドウの品種
乾燥豆類には、①硬莢種(こうきょうしゅ)②軟莢種(なんきょうしゅ)というタイプに分かれ、①はサヤが硬くて食べられない。②はサヤが柔らかく食べる事ができます。
①のタイプには、赤エンドウがあり、豆大福に使われ、また「密豆」の中に入っています。実の色が緑色の青エンドウでは、成熟した実を食べるエンドウ(グリーンピース)やウスイエンドウがあります。海外には実色が黄色の白エンドウや、灰褐色地に濃い斑点のあるウインタービーがあります。
②のタイプには、サヤごと食べる絹さや(キヌサヤエンドウ)やオランダ・サヤエンドウ(オランダ豆)、スナップエンドウがあります。
タキイ種苗販売から:
キヌサヤエンドウには、成駒三十日、仏国大莢、矮性赤花絹莢、オランダ。
スナップエンドウには、グルメ、ジャッキー、スナップ。
実エンドウには、ウスイ、久留米豊、南海緑、白滝、滋賀改良白花1号
があります。
サカタ種苗販売から:
キヌサヤエンドウは、かわな大莢PMR 、兵庫絹莢、あずみ野30日絹莢、絹小町
スナップエンドウは、つるありエンドウ「スナック」、つるありエンドウ「スナック753」、つるなしエンドウ「スナック2号」、つるなしエンドウ「ホルンスナック」
実エンドウには、グリーンピースがあります。
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3.栽培時期
9月下旬の播種から収獲は5月です。
豆類は、播種または定植後に防寒防風の工夫をした後は、あまり手間暇がかからない野菜です。キュウリと同じでつる系野菜ですから、支柱を使ってエンドウネットを張ります。
畝立てした頃の10〜11月初旬までにネットを張っておくと3月の寒い時期にネット工事をしなくて済みます。散水は開花頃と収獲期に散水する程度で後は自然の雨に任せれば良いでしょう。
4.畑の準備
連作を嫌いますので、3〜5年間は同じ場所に栽培しない。必ず畑のローテーションを組むようにしてください。
①アルカリ土壌
豆類はアルカリ土壌を好みますので2週間前に苦土石灰1平方メートル150gを散布し土と混和してください。
②施肥量
豆類の根っこには、もともとバクテリアの一種の根粒菌という土壌微生物が住んでいます。根粒菌は大気中の窒素をアンモニアに変換し植物に必要な窒素を豆に供給する働きをしています。
化学肥料のアンモニアは1000気圧という超高圧、500℃という高温のもとで窒素と水素の化学反応で工業的に作られますが、莫大なエネルギーを費やします。根粒菌はこの反応を常温常圧でいとも簡単にやってしまう優れものです。
それ故に本来なら畑に肥料を施肥する必要はないと思われるかもしれませんが、やはり根粒菌の力だけでは不足なので、播種または定植する1週間前に、完熟堆肥(牛糞、鶏糞、油かすなど)1平方メートル1kgと化成肥料100g、草木灰やリンカリもあれば少し(10〜15g)散布しましょう。根粒菌のお陰で通常野菜の1/3〜半分の肥料ですみます。
③畝工事
畝高は10〜20cm(排水の悪い畑は高畝にし20cm程度に)で、畝幅は一条植えで70〜90cm、株間は30〜45cmです。成長すると畝幅からはみ出しますので、隣の畝の野菜に覆い被さらないようにゆとりを持って畝間の幅を広くとってください。
背丈も1〜1.5m伸びますので、東西畝の場合は北側の隣の野菜の影になりますのでエンドウを東西畝にする場合、畑の一番北側に畝を作るのが望ましい。
推薦としては南北畝にエンドウを植えられるのがベストです。なお、黒マルチをすることで雑草を抑えると同時に、水と肥料を保持する事になるのでマルチ栽培をお薦めします。
5.播種(種まき)または定植
発芽適温は15〜20℃です。実際発芽は4℃以上あれば始まります。適温であれが5日ぐらいで発芽します。
種まきは10月中旬〜11月中旬(中間地・暖地)、または移植(定植)は11月初旬〜11月末までに畑に移植(定植)をします。種は発芽率の関係で1穴に3〜4粒を播きます。
種まき(播種)には2つの方法があります。
①露地に直接播種する場合:
播種の深さは2〜3cmにして、深植えはしない。株間は30で植える。特に畑に直接、蒔くと鳥害が多いので鳥対策をするようにしてください。
最近の種は鳥害防除の為のコーティングされているのもあるようですが、防鳥テープ、ワラ、枯草、不織布のベタがけで覆いをされるのが良いでしょう。
②6cmポット植えにする場合:
本葉1〜2枚になれば、ハサミで間引きをし、1~2本にします。更に本葉3〜4枚になれば畑に移植します。育苗日数は約30日なので、遅くとも播種後20日以内に植える事です。
大苗を定植すると活着が悪くなります。育苗用の培土は「種まき培土」を利用すると良いでしょう。
エンドウポット播種(各4粒)
6.間引き
草丈7〜8cmで2株残します。
7.支柱立て
11月〜12月中に、木、笹竹等で30〜50cm仮支柱を立てます。或いは、11月または3月始めにエンドウネットを使って本格的にキュウリと同じように1.5〜1.8mの支柱を立ててネットをはります。
3月始めはまだ寒さもあり、筆者は定植時の11月初に同時にネット工事を完成させています。
エンドウの支柱とネット
8.防寒・防風対策
防風・防寒から守るために、根元に籾殻や、風が強くあたる、例えば北側などに笹竹を1株ずつ差しますが、畝が南北方向の場合、風があたるのは北面になりますので、その方に防風対策をされることです。費用の問題もありますが、不織布、寒冷紗でトンネル栽培をされると防風・防寒対策は完璧になります。
越冬に適した豆の草丈は約10cmと言われていますので、その長さならば、寝かせつけた状態になっていますので、風で苗が振り回されないように工夫すれば良いかと思います。昔から、稲ワラを株の上から吊り下げて、そこに豆がまきついて防風防寒対策をしている古来からの方法があります。
エンドウの防風対策
エンドウの防風と防寒対策
9.追肥
花が咲き始めた頃に化成肥料を株間に約50g程度1回追肥します。
更に、実エンドウの場合、粒の肥大の成長を見てもう1回追肥をする場合があります。
エンドウの花
10.収獲
開花後45日目で、キヌサヤは4月初旬〜5月末、スナップエンドウは5初旬〜7月末で、実エンドウアは5初旬〜6月中旬になる。実エンドウは粒がしっかり膨らんでから収獲しましょう。逆にキヌサヤは粒が大きくならないうちに収獲しましょう。
スナップエンドウはその中間で粒がほどほどの大きさの時に収獲しましょう。三種類同時に植えた場合、傾向的にキヌサヤが早く収獲され、次にスナップエンドウで、実エンドウは一番遅い。
エンドウの実が豊作
実エンドウの収獲
11.保存
サヤエンドウは冷蔵保存では1週間程度ですが、サヤごと固めに茹でた後に水気を切ってから重ならないように並べて冷凍保存すれば3ヶ月ほど保存可能です。
エンドウ(グリーンピース)は実をとりだして、生のまま冷凍保存できます。賞味期限は1ヶ月程度 ですが、1年間は保存しても大丈夫です。しかし、やはり茹でた時に青臭さは残りますので豆ご飯には不向きです。豆ご飯には収獲した新鮮なものを使うのが一番美味いのですが、最低でも冷凍されて1ヶ月以内ならば、まだ青臭さは少ないようです。
スナップエンドウは、基本は即座に召し上がれですが、冷蔵庫に保管しても2~3日以内なら食する事ができます。ただ乾燥しやすく早く傷めやすいです。
冷凍保存の場合、軽く固めに茹でて水気を切って重ならないように並べてから冷凍保存ができますが、3ヶ月程度ではないかと思います。
12.病害虫
平均気温が20度を超える4月半ばから害虫が目立ち始め、特に収獲する頃からエカキムシ(ハモグリバエ)が多発します。エカキムシが葉の中に歩き回って葉を食い荒らすのが多く見られますが、収獲まで葉が完全に枯れる率が少ないので放置してもあまり問題がなく収獲ができています。
但し、スナップエンドウは長く(3ヶ月間)収獲ができますので、やはり害虫駆除に一工夫いりますが、農薬を避けたい方はやはりあきらめ早く収獲し保存する事です。
実エンドウも一気に収獲し冷凍保存などできますので、害虫被害が大きくなる前に対処します。ところで、カメムシは実ができ始める頃から汁を吸い始める為に実が出来る頃には実がひどい状態になり、昔はかなり被害が大きい状況でしたが、最近は激減しました。というのも、カメムシは稲にとっても大きなダメージを与える(米粒に斑点などつけ品質が落とされる原因になっていましたから)害虫で、昨今はネオニコチノイド系剤の散布の影響でカメムシも激減し、それにともなって家庭菜園の野菜への被害も激減しているようです。
以下にエンドウ類に関連する病害虫を列挙しました。
(病害)
アファノミセス根腐病(連作障害で発生する)、モザイク病(病原はウイルス)、褐紋病(カビ)、うどん粉病(カビ)、褐斑病(かっぱんびょう:カビ)、褐斑細菌病(細菌)などがあります。特に春先に気温があがり生育が進むと葉全体が白い粉を振りかけたようになります。これがうどん粉病と言います。
初期に防除をしないとなかなか防除できないやっかいな病気ですが、うどん粉病は密植、過繁茂や乾燥している時に多く発生しますのでこの点を避けるようにしましょう。
(害虫被害)
35種類もいます。それ以外に、特に鳩は豆が好きで食べにきます。
13.防除の農薬
防除剤については各農薬メーカーのホームページを参考にしてください。
14.栽培ポイント
①酸性土壌を嫌うので苦土石灰を散布しややアルカリ土にする。
②連作を嫌い3〜5年は連作しない。
③過湿を避ける。深まきはしない。2〜3cmの深さで、1穴2〜4粒播種する。
④秋蒔き栽培では播種時期が早いと厳冬期まで生育が進み過ぎて寒さによる障害がでますので早まきを避けることです。
⑤大苗で越冬させない。背丈10cm程度がよい。大きいと冷害にあって枯れる場合があります。
⑥追肥は開花期のみで良いが、豆の肥大の成長度を見て必要に応じて肥大期に追肥する。
⑦収獲後の葉の残渣処理時に害虫である青虫類がついているので殺虫剤散布後にゴミ箱に回収するか、畑の残渣穴に埋める。さもないとこの青虫が隣の畝にある野菜に移動して被害を拡大するので必ずエンドウ類収穫後の残渣は害虫駆除後に処分する。
この青虫は蛾の仲間で幼虫が食害します。主にシロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウ、ヨトウガ(ヨトウムシ)の3種類がいます。若齢幼虫の体色は緑色で、老齢幼虫の体色は緑色・褐色・黒色などさまざまあり、体長4センチです。この青虫がエンドウ類の残渣を処分すると隣の野菜に移動して食害をするのです。
15.栽培動画
絹さやの育て方 4月15日畑の様子
出典元:YouTube
【農】ウスイエンドウのネット張り
出典元:YouTube
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