hayateさん
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クマ被害にあった女性「鈴もスプレーも役に立たなかった」個人ができる対策の限界
暖かい日が続いたため、間もなく12月に入るのに「クマが現れるのではないか」という不安が拭えない。
群馬県内の目撃件数は例年は9月頃から減少するが、今年は8月が69件、9月が70件、10月が128件と増加している。県は、12月もクマの出没に注意してほしいと呼びかけている。
「あれだけ対策をしたのに」。東吾妻町の女性(83)が、10月にクマに遭遇して大けがを負った時の様子を語った。
女性は毎朝、交通量の少ない川沿いの道を1人で30分ほど散歩していた。10月18日の午前7時半頃、自宅近くの町道を上っている時、突然、右斜め前から黒い巨体が覆いかぶさり、顔をひっかかれた。眼鏡は吹き飛び、顔の右半分の皮がはがれ落ちて出血した。
クマはそれ以上攻撃せずに逃げ去ったが、女性は約3週間の入院を強いられた。退院後も顔の右半分は感覚がなく、まだ右目は開かない。襲われた恐怖から散歩ができなくなり、わずかな物音にも「クマだ!」と敏感に反応してしまう。
女性は1年前の散歩中に道路を横切るクマを見かけ、散歩の際はクマよけの鈴とスプレーを持ち歩いていた。この日もスプレーの安全クリップを外し、いつでも噴射できる状態にしていたが、「何も役に立たなかった」という。女性は「個人の対策では限界があると痛感した」と声を震わせた。
現在懸念されるのが、「冬眠をしないクマ」の出現だ。県自然環境課によると、今年は暖冬となる見込みで、餌のドングリも不作。耕作放棄地も増え、人の生活地域での目撃例が相次いでいる。同課の担当者は「今年は予測が難しく、ひとまず12月中はクマの出没に注意してほしい」と話す。
県内では今年、クマによる人身被害が、この女性を含めて28日までに4件発生し、捕獲頭数の上限撤廃を求める声も出始めた。
8日に登山中の男性が襲われて軽傷を負った安中市は、捕獲上限頭数の撤廃などを求める要望書を10日付で県に提出した。市農林課は「市街地への出没も増え、次の被害者が出るのではないかという危機感がある」と説明した。
県の「ツキノワグマ適正管理計画」(2022~27年度)によると、現在の捕獲上限頭数は年242頭で、推定生息個体数の12%にあたる。県自然環境課は「捕獲上限はもっと分析する必要があると認識している」とする一方、「クマは保護の対象でもあり、慎重に考えたい」としている。
10月にクマに遭遇し、大けがをした83歳女性が当時の様子を語った。散歩中に突然、顔をひっかかれ、顔の右半分の皮がはがれ落ちて出血したそう。クマよけの鈴とスプレーを持っていたが「何も役に立たなかった」という